6秒ルールは、続かなくていい。管理職が怒りを仕組みで制御する3つの対処法
アンガーマネジメントといえば、「イラっとしたら6秒待つ」という6秒ルール
その6秒ルールを試したのに、肝心なときには使えなかった。そんな自分を責めているなら、その必要はありません。
答えは、6秒ルールが続かなくて当然だということ。
私も、昔は子どもの怒りに怒りで返していた側の人間でしたし、6秒ルールもうまく働きませんでした。
そこから、怒りを意志ではなく仕組みで制御する形に変えました。今は企業や行政機関で、研修をお届けしています。
この記事でお伝えするのは、6秒ルールに頼らずに済む3つの対処法です。職場の場面に沿って、具体的に解説します。
怒鳴った後に何時間も引きずる管理職の方に、読んでいただきたい内容です。
6秒ルールが続かないのは、意志が弱いからではありません
まず、6秒ルールの正体をはっきりさせておきましょう。
6秒ルールは、怒りを消す技ではありません。衝動的な反応をやり過ごすための技なんです。
感情マネジメントの世界では、怒りのピークは数秒で過ぎると言われています。
その間だけ待てば、後悔する一言を避けやすくなる。
すなわち、「ついカッとして」反射で声を荒らげたり、言い返したりすることは減っていく。
狙いは、ここにあります。
ところが、職場で怒りが出る場面は、待つ余裕のない瞬間ばかりです。
・同じミスが、今週だけで3回繰り返された
・会議の席で、全員の前で言い訳をされた
・締め切りの直前に、確認漏れが見つかった
こうした場面では、怒りが一気に押し寄せる。数を数える前に、口が先に動いてしまう。
誰にでも起きることなんですよね。
数を数えるには、落ち着いていることが前提です。けれど、落ち着けない状態こそが、怒りそのものでしょう。
6秒ルールが続かないのは、意志ではなく、使う場面との相性の問題。
続かなかった経験は、失敗ではありません。仕組みで解決する段階に進む、合図だと受け止めてください。
会議・1on1・メールで、6秒ルールが崩れる瞬間
では、崩れる場面を具体的に見ていきましょう。
会議で、部下が言い訳をしたとき
全員が見ている前で、「それは私の担当ではないので」と返された。
その瞬間、頭に血が上ります。6秒どころか1秒も待てずに、声が大きくなってしまう。
周りの視線が集まる分、引っ込みがつかなくなるんですよね。
1on1で、同じ話が繰り返されたとき
先月も伝えた内容を、また一から説明している。
「前にも言ったよな」という言葉が、喉まで出てきます。落ち着いて聞くつもりが、途中から声のトーンが変わってしまう。
メールやチャットで、報告が遅れて届いたとき
夜の22時、確認が必要な件の報告が、ようやく届いた。
画面越しだからこそ、怒りは文面に強く出ます。書いた直後は正しい気がして、送信した翌朝に悔やむ。
これも典型的なパターン。
3つの場面に共通するのは、怒りが出る前の準備が、何もないこと。
大事なのは準備するのは、怒りが出る前。
準備さえあれば、6秒ルールに頼らなくても動けます。次から、その準備を3つお伝えしましょう。
怒りに点数をつけて、温度を見える化する
一つ目の対処法は、怒りに点数をつけること。
やり方は簡単です。怒りを感じた瞬間に、心の中で0から10の点数をつけます。
10は、これまでの人生で一番腹が立った状態。0は、まったく怒っていない状態です。
その間で、今の温度を選びます。
たとえば会議で言い訳をされたとき、心の中で「今、6点だな」とつぶやく。これだけで、怒りの渦中にいた自分が、怒りを眺める側に回ります。
点数をつける作業には、少し考える力が必要です。その分だけ、感情の勢いが落ち着きやすくなるでしょう。
続けるうちに、自分の怒りの傾向が見えてきます。何点あたりで声が変わるのか、どんな場面で7点を超えやすいのか。
怒りは、消さなくていい。まず、測るだけでいい。
怒鳴る前に言う一言を、先に決めておく
二つ目の対処法は、怒りが出た瞬間に言う一言を、平常時に決めておくこと。
怒りの最中に、適切な言葉を選ぶのは至難の業。だからこそ、あらかじめ用意しておくんです。
候補を3つ挙げましょう。
・一度、頭を整理させてください
・この話は、10分後にもう一度させてください
・事実だけ、先に確認させてください
どれか一つを、口に出して練習しておくのがコツです。何度か繰り返せば、いざというときに口が動きやすくなります。
言い換えるなら、怒りの前に台本を持つということ。台本があれば、頭が真っ白でも口が動く。
この一言には、もう一つ効果があります。部下から見ても、上司が感情に飲まれず一度立ち止まったと伝わるからです。
怒りの引き金になる「べき」を書き出しておく
三つ目の対処法は、怒った出来事を記録した上で、その怒りの背景にある考えを、紙に書き出すこと。
例えば、怒った記録にはこういうことがあったとします。
・大事なことを期限が過ぎた後で報告された。
・会議で、部下が言い訳を始めた。
・会議の席に開始ギリギリの時間で入ってきた。
そしてこうした怒りの多くには、こうあるべきだという理想が隠れています。
・報告は、期限前にするべきだ
・上司には、言い訳をするべきではない
・会議には、5分前に着席するべきだ
こうした考えが破られたとき、怒りは生まれる。問題は、その考えの強さなんです。
書き方はシンプル。週に1回、時間をとり、怒った場面とそのときの考えを緩めることができないか書き出します。
たとえば、書き方の例は次のとおりです。
・場面:会議で、部下が言い訳を始めた
・考え:部下は言い訳をせず、まず謝るべきだ。でも謝れないのには何か理由もあったのかもしれない。できれば、まず事実を話してほしい。
書き出したら、その考えを「せめて」どのくらいならOKなのか緩めてみてください。
・緩めた形:言い訳をしてもいいから、せめて最後は再発防止のための方法を出してほしい。
たったこれだけで、次に同じ場面が来たときの温度が変わります。
怒りの正体は、相手ではなく、自分の中の理想との差。
個人の努力で抱え込まず、チームの仕組みにする
ここまでの3つは、一人でも今日から始められます。
ただ、上司が一人で変わろうとしても、限界があるのも事実です。部下が萎縮したままでは、話しやすい空気は生まれない。
必要なのは、チーム全体で共有する共通のルール。
上司だけが感情を整えても、部下は次に怒られるかもしれないと身構えたままです。逆に、全員が同じ言葉と手順を知っていれば、安心して報告できる職場に近づきます。
取り決めの例は、次のとおり。
・感情が高ぶったときは、席を外してよいという合意
・指摘は、事実の確認から始めるという共通ルール
・1on1では、感情ではなく事実と期待を伝えるという型
こうした取り決めがあると、上司の一言が変わる。部下の受け取り方も、少しずつ変わっていく。
管理職の努力を、チームの仕組みに変える。そこまで進んで、職場の空気は変わります。
まとめ
ここまでの内容を振り返ります。
・怒りに0から10の点数をつけると、怒りを眺める側に回れる
・怒りが出たときの一言を、平常時に決めておく
・怒りの背景にある考えを書き出し、「せめて」どのくらいならOKか考えて緩める
怒りは、意志で抑えるものではなく、仕組みで扱うものです。
今日、怒鳴ってしまった方も、自分を責めなくて大丈夫。あなたの怒りは、変われる証拠です。
次のステップ
ここまで読んでくださった方は、チームの空気を変えたいと思っている管理職ではないでしょうか。
個人の対処法は、あくまで入口です。チームの仕組みとして定着させるには、共通の言葉と練習の場が必要になります。
私は、アンガーマネジメントを土台にした研修を、企業や行政機関にお届けしてきました。
・管理職向けのアンガーマネジメント研修
・心理的安全性のあるチームづくり
・育てながら成果を出す、イクボス研修
社長や人事の方に、この記事を共有していただくだけでも構いません。研修のご相談は、下記までお気軽にご連絡ください。
こころ工房 まる 村松稔
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私は、潰れる人間がいなくなる社会をつくりたいと考えています。
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