「ツ」と「シ」が教えてくれた怒りの正体。6秒数える前に気づきたい「べき」の話
6秒数えたのに、まだイライラが消えない。そんな経験はありませんか。
それはあなたの努力が足りないからではありません。怒りの根っこに、まだ目が向いていないだけです。
私はアンガーマネジメントの講師として、研修や講座で多くの方と向き合っています。その中で確信したのは、怒りは「見ているポイント」を知ると、驚くほどラクになるということです。
この記事では、息子との英語の勉強で見つけた、ある文字の話から、怒りの正体に気づく方法をお伝えします。アンガーマネジメントをこれから学びたい初心者の方に、ぜひ読んでほしい内容です。
息子に英語を教えていて、衝撃を受けた話
先日、次男に英語を教えていたときのことです。
単語に読み仮名を振ってあげようと、カタカナを書いていました。ところが、息子が首をかしげます。
「これ、シ? ツ?」
実は私は、大人になっても「ツ」と「シ」を書き分けられません。自分の中では、違いは「下から跳ね上げるか、上から払い降ろすか」だけ。そのつもりで書いていたので、息子にはまったく区別がつかなかったのです。
困った私は、ネットで調べてみました。そこで知ったのは、思いもよらない事実でした。
「シ」と「ツ」の違いは、一画目と二画目の点が上下に並ぶか、左右に並ぶかだったのです。
恥ずかしながら、大人になって初めて知りました。かなりの衝撃でした。
同じ文字なのに、見ているポイントが違った
もう少し、この話を掘り下げます。
私は、点の位置を見ていませんでした。それでも、自分の書く「シ」と「ツ」は読めていました。払いか跳ねかで判断していたからです。
一方、息子は、小学校で習ったとおり、点の位置を見て読み分けています。教科書的に正しいのは、息子のほうです。
私にとっては「読めるはず」でした。でも、息子にとっては読めなかった。同じ文字を見ているのに、見ているポイントが違ったのです。
自分では「読めるはず」「伝わるはず」と思っていることが、相手には届いていない。実はこれ、怒りの場面でもよく起きています。
怒りの正体は、あなたの「べき」にある
アンガーマネジメントでは、自分の期待や価値観を「べき」という言葉で表します。
「約束は守るべき」 「挨拶はするべき」 「子どもは親の言うことを聞くべき」
こうすべき、ああすべき、の「べき」です。
この「べき」は、考え方のクセです。小さなこだわりと言い換えてもいいでしょう。心理学では、認知と呼ばれるものにあたります。
大切なのは、良い悪いではないということです。
字の形には、教科書に書かれた正解があります。でも、「べき」には正解がありません。あるのは、「私はこれを大事にしている」という、その人の見ているポイントだけです。
そして、ある日、自分の大きな期待が裏切られたとき、人は怒りを感じます。
「それは、そうするべきでしょう」 「普通は、こうするものでしょう」
その「普通」は、あなたにとっての「普通」。相手が見ているポイントは、別の場所にあるかもしれません。
怒りは目立つ。だから、根っこが見えなくなる
怒りは、目立ちます。エネルギーも大きい。
だから私たちは、つい怒りそのものに目を奪われてしまいます。「どうやって抑えよう」「どうしたら怒らなくなるだろう」と。
でも、本当に大事なのは、その奥にあるものです。
自分のどんな「べき」が、いま裏切られたのか。
これに気づくこと。それが、アンガーマネジメントでいちばん大事なポイントです。
6秒ルールは大切。でも、それだけでは足りない
怒ったら6秒数える。
アンガーマネジメントと聞いて、この方法を思い浮かべる方は多いと思います。もちろん、とても有効です。カッとなった瞬間に、衝動的な言動を防ぐ大事な方法です。
6秒は、落ち着くための時間です。
ただ、これは対処療法にあたります。
熱が出たときに、解熱剤で熱を下げるようなもの。つらさはやわらぎますが、熱の原因そのものは、そのままです。
6秒数えて落ち着いても、また同じ場面で同じように怒ってしまう。そんなときは、原因である「べき」に光が当たっていないサインです。
だから、もう一歩進みます。その場しのぎの対処に加えて、怒りやすい体質そのものを変えていく。そのカギが、自分の「べき」を知ることです。
アンガーマネジメント初心者が、最初にやること
難しいことは何もありません。次の2つを、合わせて取り組んでみてください。
- 対処療法として、6秒ルールで落ち着く
- 体質改善として、自分の「べき」を理解する(自己理解を進める)
1つ目は、怒りを感じた瞬間のための練習です。カッとなったら、まず6秒数えて落ち着く。それだけで、言ってしまった、やってしまったという後悔が減ります。
2つ目は、落ち着いたあとの練習です。気持ちが静まってから、次のことをしてください。
- 怒ったことを記録にとどめる
- それを1週間程度書き溜める
- 週末など落ち着いたときに、あのとき自分のどんな「べき」が裏切られたのかを言葉にする
書き溜めたものを見返すと、「あ、私はこれを大事にしていたんだ」という共通点が見えてきます。これが、自分の「べき」です。
私の「シ」と「ツ」のように、自分では「読めるはず」と思っていることほど、当たり前すぎて、見ているポイントが人によって違うことに気づけません。だからこそ、記録という形で目に見えるようにします。
自分の「べき」が言葉になると、相手の行動に腹が立ったときにも、「見ているポイントが違うのかも」と一歩引いて考えられるようになります。
「べき」に気づくと、何が変わるのか
自分の「べき」に気づけると、3つのいいことがあります。
1つ目は、怒る必要のある場面と、そうでない場面を選べるようになること。
2つ目は、伝え方が変わること。「なんでやらないの」ではなく、「私はこうしてもらえると助かる」と、期待を言葉にして伝えられるようになります。
3つ目は、人間関係がラクになること。相手を変えようとするのではなく、違いを前提にして付き合えるようになるからです。
怒りをなくすのが、アンガーマネジメントではありません。怒りに振り回されない自分になる。そのための第一歩が、「べき」に気づくことです。
あとがき
私は、「シ」と「ツ」の違いを、大人になるまで知りませんでした。それでも、自分では読めていたし、書けていました。
人の見ているものは、それぞれ違います。それは、怒りの場面でも同じです。
もし今日、誰かにイライラしたなら、それは自分の「べき」に出会うチャンスです。まず6秒数えて落ち着いてから、「私は何を大事にしているのだろう」と、そっと問いかけてみてください。
アンガーマネジメントは、続けるほど身についていきます。毎日少しずつ触れることが、いちばんの近道です。
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最後まで読んでくださって、ありがとうございました。この記事が、あなたの「べき」に気づくきっかけになれば嬉しいです。
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