研修講師が明かす「カウンターアンガー」の正体。あなたが怒ったわけじゃない
クレーム対応で、つい声を荒げてしまった。
部下から怒り交じりに詰め寄られると、つい強く言い返してしまう。
家庭では、子どもの一言にカチンときて、つい強い口調で返してしまうこともあるでしょう。
「アイツのせいで!」「あんなことさえなければ」
心の中では怒りの中が渦巻きます。
そのあと「なんであんな言い方をしたんだろう」と、何時間も引きずる。
もしくは、怒らせたあの人のことやその出来事でしばらく悶々とする。
先に答えを言います。それは、あなたの人間性や性格の問題ではありません。
私は研修講師として、たくさんの管理職や経営者の方と向き合ってきました。
また、個人カウンセリングとして家庭のことや仕事のことなど、たくさんの悩みを聞いてきました。
同じ悩みを何度も聞いてきたからこそ、断言できることがあります。
その向けられた怒りの反応には、ちゃんと名前がついているんです。「カウンターアンガー」。
この記事を読むと、なぜ自分がつられて怒ってしまうのか、その仕組みと止め方がわかります。
クレーム対応や部下対応、または子育てで消耗している方に、ぜひ読んでほしい一本です。
カウンターアンガーとは何か
まず、はっきりさせておきたいことがあります。
カウンターアンガーとは、相手が先に怒りを見せた場面で、それにつられて自分も怒りで返してしまう反応のことです。
クレームで相手が声を荒げた。部下が困り事を、怒り交じりに訴えてくることもあります。
家庭ではお子さんが癇癪をおこして親に暴言を言ったり叩いたりすることもあるでしょう。
理不尽な言い方をされて、思わずムッとしてしまった。
どの場面にも共通しているのは、最初に怒り出したのはあくまで相手側だということです。
それなのに、返す刀で自分まで怒りを乗せてしまう。そして後になって「大人げなかった」「もっと冷静な対応ができたはずだ」と自分を責める。あるいは、「アイツのせいで!」と怒りが止まらない。
このパターンには、心当たりがある方も多いのではないでしょうか。
実は、カウンターアンガーはアンガーマネジメントという分野が生まれた当初から扱われてきたテーマです。
怒りをぶつけられた人間が、なぜ同じように怒りで返してしまうのか。
この問いは、決して新しいものではありません。長年にわたって研究され、対処法が積み上げられてきた領域なんです。
あなたが特別に短気なわけではない。それは、多くの人が同じようにつまずいてきた反応です。
そう知るだけでも、少し肩の力が抜けるはずです。
私自身、家庭の中で似たような経験を重ねてきました。
子どもが感情的にぶつかってくると、こちらも同じ温度で返してしまう。そのたびに後悔していた時期があります。
だからこそ、この反応の正体を知ったときの安心感が、よくわかるんです。
なぜ考える前に反応してしまうのか
カウンターアンガーの厄介なところは、意思とは関係なく起きるという点です。
「今日は冷静にいこう」と朝は思っていたはずなのに、いざ相手が怒りをぶつけてくると、先に反応してしまう。
これは、根性や我慢の問題ではありません。
カウンターアンガーの正体は「反射」です。
考えて、判断して、それから行動する。本来はそういう順番のはずが、怒りに触れた瞬間にその順番が飛ばされてしまうんですよね。
相手の怒りという刺激に対して、脳と体が自動で反応してしまう。それが反射です。
考える間もなく言葉が口から出てしまい、あとから「しまった」と気づく。順番が逆転しているだけなんです。
経営者や管理職の立場の方から、よくこんな声を聞きます。
- 好きで怒鳴っているわけじゃない
- でも、どうすればいいかわからない
- 気づいたときには、もう言葉が出てしまっている
- 家に帰っても、そのやり取りを何度も思い出してしまう
どれも、反射である以上は当然の悩みです。
意思の力だけで止めようとしても、うまくいかないのは当たり前だったんです。
必要なのは、根性ではなく仕組みでした。
反射だとわかれば、責めるべき対象は自分の性格ではなく、対処の方法だと見えてきます。
カウンターアンガーを止める具体的な対処法
「6秒待てば怒りはおさまる」というルールを聞いたことがある方も多いと思います。
たしかに有効な方法ではあります。ただ、実際の現場では続かないという声をよく聞くんですよね。
理由はシンプルで、反射が起きた瞬間には、6秒数えることすら忘れてしまうからです。
そこで私が研修でお伝えしているのは、まずは怒りの反射から逃げることです。すなわち反射が行動に現れる前段階での対処法。
その場から離れる。(トイレに行ってきます。「すいません、いま着信があって」など、理由は何でもいいですし、ホントでなくてもいいです)
どうしても離れられない時は、飲み物の香りやアロマ、香水など、感覚を使って意識を怒りから離してしまう。
とにかく落ち着きましょう。
落ち着かないまま、次の行動に移っても良い結果は得られません。
大事なのはおちつくこと。この場合、6秒待っているかどうかはあまり気にしなくて構いません。
そのうえで、相手の怒りを「情報」として受け取る練習をしていきます。
そして、言葉を発する前にワンクッションを置きます。
肩に力が入ったまま話し始めると、声のトーンにも棘が出ます。
ひと呼吸だけ肩の力を抜いてから話す。それだけで、相手に伝わる印象は変わってきます。
大事なのは、怒りを感じないようにすることではありません。
反射が起きる一瞬前に、自分で気づけるようになることです。
そこに気づけさえすれば、選べるようになります。
言葉を選ぶ余地が、生まれるからです。
実際に、ある方はこの方法を意識するようになってから、クレーム対応の場で「一呼吸置いてから話す癖」がついたと話していました。
以前なら反射的に言い返していた場面で、まず相手の言葉を最後まで聞けるようになった。それだけでも、相手の態度が柔らかくなることが多いそうです。
反射を完全になくすことはできません。それでも、一瞬だけ間を作れるようになると、対応の質は大きく変わっていきます。
これは特別な才能ではなく、練習で身につく仕組みです。
怒りをなくすのではなく、反射しそうな自分に気づいて選び直す。それがカウンターアンガー対処の基本です。
まとめ
ここまでの内容を振り返ります。
- カウンターアンガーは、相手の怒りにつられて自分も怒ってしまう反応
- 怒り出したのは、あくまで相手側である
- これはアンガーマネジメント研究の初期から扱われてきたテーマ
- その正体は、考える前に行動に移す「反射」
- 反射のまま行動に移す一瞬前に一呼吸置くことが、後悔を防ぐ第一歩になる
クレームや部下対応に悩まれる方に、伝えたいことがあります。
それは、あなたの弱さでも性格でもありません。
次のステップ
反射に気づけるようになったあとは、実際の場面でどう言葉を選ぶかという段階に進みます。
私はこれまで、企業や行政機関の研修を通じて、管理職の方々と一緒にこのカウンターアンガーへの対処を体系立てて学んできました。
現場ごとに、クレームの受け方も、部下との距離感も違います。だからこそ、一般論だけでは足りないんですよね。
自分の職場の場面に当てはめて、繰り返し練習(というより毎日が実践)できる環境が欠かせません。
知っているだけ、と使えることの間には、大きな差があります。
体系的に学ぶ場では、次のようなテーマを扱っています。
- クレーム対応の実際
- 部下との1on1で起きやすい反射パターン
- 職場全体で取り組むためには
ひとつの場面ごとに反射を止める仕組みを積み上げていくと、半年後にはだいぶストレスが楽になった、というお声もいただいています。
「怒らない自分」を目指す必要はありません。目指すのは、反射に気づいて、選び直せる自分です。
もっと体系的に学びたい方は、ホームページの講座・研修案内をのぞいてみませんか。